渋滞学

渋滞学 (新潮選書)

渋滞学 (新潮選書)



少しづつ暇を見つけて読んで、ようやく読み終わりました。
とってもよい本です。これから学問を始める人にぜひ読んでほしい。
こむつかしい内容は全て「講義」という部分にまとめられているので、
その部分を飛ばせば、文系の人でもよく理解できる。


渋滞がどのように発生するかのメカニズムについての研究が面白かったのは勿論、
「へぇー」と学んだこと二つ。

(ビリヤードなどで)ぶつかる球の数が二つならば完全にその振る舞いはわかるが、一般に三つ以上の球が同時に衝突してしまうような状況では、その後の球がどのように動くのかはビリヤードのプロでもわからないし、実は物理学でも解けない問題として知られている。(p.171)

しかも、この「3体問題」は「解けない」ということが数学的に証明されているというから、それにも驚いた。
「できない」ということの証明というのは難しそうなのに。


もう一つは、「コンピュータが間違える計算」というものがあるということ。
コンピュータは計算こそ得意技だと思っていたのに、「デジタルコンピュータでは原理的に計算できない問題」というものが存在するということに衝撃を受けた。
それは「パイこね変換」という「パン屋がパイ生地をこねるときの、伸ばして折りたたんで、という繰り返しを数学的にモデル化したもの」。
これは「生地の中の含有物を最も効率よく混ぜ合わせることができる、というのがカオス理論によって証明された」らしいのですが、これをコンピュータにその通りに計算をさせると途中から結果が破綻してしまうらしい。(p.229)


どうして?と思った方はぜひ本書を。その他、とにかく「知的刺激」に満ちた本です。
まぁ、上記二つのことを含め、理系の人には「当たり前」のこともたくさんあるとは思いますが…。