銀の匙

銀の匙 (岩波文庫)

銀の匙 (岩波文庫)


マンガの方だけじゃなくて、小説の方も知っておいた方がいいよな、くらいの気持ちで読み始めたのですが、これがまたまさに「今読むべき本」で大ヒットでした。


主人公が子供時代・青年時代を語っているものですが、当時を振り返る、というより、まさにその時の視点、という感じで、非常に面白い。
育児書を読んで子供の遊びってどんなのがあるのかな、とか思ったりしていた自分がアホらしい。「子供の視点」はすべてこの本にある、と言えます。育児書を読むなら、この小説を読む方がずっといい。「そうだな、子供ってきっとこういうのが好きだな」とか思いながら、この先のことを考えながら読みました。そういう意味で、本当にタイムリーにいい本に出会えました。


好きだった場面はしょうゆを注ぐところ。「 と 」と一文字の効果音。初出ではないけれど、この小説、会話以外のかぎかっこをつけるところでかぎかっこを使わず、前後二分アキで書いていたりするので、この「 と 」はかなりいい感じでした。


あと、「い」抜き言葉が普通に使われていたのも印象的。決して「乱れた口語体」という訳じゃないんだなぁということが分かりました。


にしても、なんで題名が『銀の匙』なんだろう。一回登場しただけなのに。小説の題名ってどうやってつけるんだろうなぁ。